メディアビジネスを取り巻く現状
NHKの2015年国民生活時間調査によると、日本人のメディア接触時間は1日に平均5、6時間程度で、既に上限に達している。2010年と2015年を比較すると、20歳代、30歳代では「テレビを全く見ない」層が増加しているが、「テレビを見る」層でも2時間未満の短時間視聴が多数派となっている。すなわちテレビでの露出を増やしても、20歳代、30歳代を中心に情報が届きにくいのが現状である。また、30歳代以下では「一番欠かせないメディア」としてネットがテレビを上回っており、メディア接触時間でもスマートフォンがテレビを上回っている。
このように30歳代以下を中心にメディア、そして広報、広告のビジネスの主戦場はスマートフォンに移行している。さらにスマートフォンの主なコンテンツは、LINEやフェイスブック、ツイッターである。接触時間が少ない新聞やテレビに企業が好意的に取り上げられたとしても、その価値は相対的に低下していると考えられる。一方、企業の広告の予算配分、広報のパワー配分は新聞、テレビ、雑誌で占められている。その中でネットへの配分、特にスマートフォンが占める割合は3%にすぎない。30歳代以下では、メディア接触時間全体の3分の1以上をスマートフォンが占めているにもかかわらず、企業は消費者が最も時間を使って見ているメディアに対応していないという状況にある。「クルマ離れ」や「ビール離れ」など、若者は「何とか離れ」しているといわれるが、若者のメディアへの接触状況を無視して、広報・広告活動をしているのは、むしろ企業であるという側面もある。企業の幹部、経営層は新聞、テレビを中心に見ているため、企業はそれらのメディアでよく取り上げられるように努力する傾向がある。企業はこのようなメディアビジネスの環境変化を注視して、コミュニケーションに対する考え方を変えるべきである。

LINEの特徴
○2人に1人がLINEユーザー
国内のLINE登録ユーザーは6800万人以上であり、これは日本人の2人に1人に当たる計算である。特にアクティブなユーザーが多く、外部調査によると、DAU(Daily Active Users)と呼ばれる、1日に利用や活動のあった利用者数を登録ユーザー数に対する割合で表すと60%を超えている。すなわち60%以上のユーザーが、毎日LINEを使用していると考えられ、6800万人のおよそ60%である4000万人超の方が、毎日LINEを使用していることになる。この数字は新聞と比較すると、朝日、毎日、読売の購読者を足した数よりも多く、テレビの視聴率で換算すると年末の紅白歌合戦級であると考えられる。LINEはあくまでCtoCのコミュニケーションなので、新聞広告とLINEの中で広告を出した場合の露出の価値を単純に比較することはできないが、ユーザー数の規模としてLINEはマスメディアのレベルに達しつつあると考えている。さらにLINEは全世界に広がりつつあり、世界に月間アクティブユーザーがおよそ2億1840万人いる。台湾やタイでは日本の同等以上に普及していて、インドネシアなどでも普及している。

○LINEはソーシャルメディアではない
LINEはソーシャルメディアとして、ツイッター、フェイスブックと共に話題に上るが、LINEはソーシャルメディアと自称したことはなく、LINEをソーシャルメディアとは考えていない。その理由のひとつはユーザーの属性である。LINEユーザーの人口分布は、日本のそれとほぼ同じという調査データがある。一方、ツイッターやフェイスブックのユーザーは、LINEに比べて大都市の高学歴、高収入、高リテラシーのエリート層に偏っているといわれている。ホワイトカラー向けのヘッドハンティングのための求人サービスや、金融機関がプライベートバンキングする場合など、特定の狭いターゲットに向けた告知をしたいならLINEは適していない。LINEは幅広くあまねくいろいろな人に対してメッセージを発信する場合に有効である。理由の2つ目は、LINEの使われ方である。スマートフォンの登場前は携帯電話会社がメールアドレスを提供していた。そのため携帯電話会社を変えると電話番号は変えなくてもよいが、メールアドレスは変更を強いられた。携帯電話の用途として電話よりもメールが多く、携帯電話会社を変える場合はメールアドレスの変更を周りに知らせる必要があった。一方LINEは、携帯電話会社を変えても、オペレーションシステムを変えても、海外転勤の場合も、スマートフォンにLINEが入っていれば、LINE上で繋がりを保つことができ、アドレスの変更をする必要がない。このような理由から、携帯電話会社の変更やスマートフォンに移行するタイミングで、LINEが携帯電話で最も使われていたメールにとって代わったと考えられる。

○企業と消費者の情報インフラへ
個人間でのLINEは十分に普及したので、今後は、企業と消費者を繋ぐ情報インフラビジネスに成長させたいと考えている。2015年の調査結果で企業・ブランドから情報を受け取る手段について、複数回答では、1位は電子メールが約90%であり、次いでLINEが約75%、フェイスブック、ツイッターは約40%であった。この中で最もよく利用するサービスではLINEが1位であった。これまで個人間の連絡手段であったLINEが、企業やブランドと消費者を繋ぐ情報伝達手段になりつつある。今の消費者はテレビや新聞に関心が薄く、コントロールすることが難しい。しかしLINEは、特にコントロールできない30歳代以下を中心にした消費者にも、無視されずによく利用される情報伝達手段となっている。既に200以上の企業がアカウントを持ち、情報発信を始めている。消費者の受信箱は既に多くのメールマガジンで埋め尽くされているが、LINEではメールのような状況は起こらない。企業の有効な広告手段として活用され、企業と消費者を繋ぐ重要な情報インフラになっていくと考えている。

LINEの新サービス
最近LINEが注力している事業のひとつがLINENEWSである。LINE NEWSのLINE公式アカウントからは、1日3回PUSH型でメッセージが配信されている。この配信の一部を広告や広報として使えるようになっている。特定の日にLINEに露出を確保したい情報があれば、ペイド記事として掲載することもできる。朝昼晩と3回配信され、視聴者数は保障できないが、数百万人に届けることができ、非常に使いやすいサービスと考えている。今後もLINEは、従来のメディアによる広報や広告とは異なった手法で、ニュースや動画などを含めて企業に使ってもらえるサービスを幅広く展開していく。